酵母と酵素の違いを知っていますか?
最近、テレビや雑誌などメディアで話題の「酵素」や「酵母」という言葉、あなたもきっと1度や2度は見聞きしたことがあるでしょう。
店頭やネット上でもさまざまな「酵素飲料」や「酵母飲料」があって、「何となく身体に良さそうなイメージはあるけど、一体何がどう違うの?」「同じようなものじゃないの?」という人も少なくないのではないでしょうか。中には、気づいてさえいない人もいるかもしれませんね。
実際、専門の道に進んだ人を除いては、中学校で「消化酵素」について
少し習った程度という人がほとんどでしょう。
「酵母」に至っては、パンを焼いたりする人以外、普通の生活ではあまり縁がありませんよね。
では、「酵素や酵母って何なの?」という疑問について、見ていきましょう。
酵素はたんぱく質、酵母は生き物?!
「酵素」は、身体の中で起こるさまざまな化学反応を手助けする物質、
つまり、触媒作用を持つたんぱく質です。
食べ物を消化し、その栄養素を吸収するために、消化酵素はなくてはならないものですね。
もう一つ、私たちの生命活動に欠かせないのが、代謝酵素です。
新陳代謝を行い、要らなくなったものを排泄する働きを支えています。
呼吸をしたり、筋肉を動かしたり、ものを考えたりなどといった活動のほか、
自然治癒力にも、代謝酵素が大きく関わっています。
一方、「酵母」はアルコール発酵やパンの発酵などにも利用される微生物の一種で、
単細胞性の真菌類(カビやキノコの仲間)の総称です。
酵母は、酸素がない状態で、糖を分解してエネルギーを産出します。
普通は5?10ミクロン(1ミクロンは1ミリの1/1000)の大きさで、
土、水中、植物の葉・花、果実や、哺乳類や鳥類の皮膚や体内など、
自然界のさまざまなところに生息しています。
「酵母」と一口にいっても、ビール酵母、味噌酵母、納豆酵母などさまざまあり、
これらをまとめて「酵母」と呼んでいます。
酵母菌には発酵する働きがある
人間は、昔から微生物を利用して食品を作ってきました。
パンを作るときはパン酵母、味噌を作るときは味噌酵母。
お酒を作るときは、お酒の種類によってビール酵母、ワイン酵母、清酒酵母、ウィスキー酵母など、
それぞれの作り方に適した酵母が使い分けられています。
他にも、醤油・酢・納豆・チーズなど、もはや私たちの生活に発酵食品は欠かせませんね。
酵母は、発酵食品の元となる有機物(=食物)に含まれる糖分をエサにして、
アルコールと炭酸ガスに分解しながら、分裂・成長していきます。
この状態を「発酵」といい、この作用を利用して発酵食品を作っているのです。
「腐敗」も仕組みは同じですが、人間にとって有用な物質を作り出す場合を発酵といいます。
とはいえ、例えば鮒寿司など、知らない人が見れば腐っているとしか思えないものもあるなど、
その境界はずい分あいまいで、勝手といわざるをえないかもしれませんね。
酵母と酵素の関係
今や健康や美容のためにもとても大切な酵素ですが、たんぱく質が主成分であるため、
胃酸に弱く加熱によって壊れたり働きが鈍くなったりする可能性があります。
また、高アルカリの条件下でも壊れやすいといった特徴があるため、
せっかく食品として摂取しても、身体の中で有効に働くことは期待できません。
一方、酵母の中でも生きた強い天然酵母は、食物繊維などからできた厚い壁と層を持っていて、
熱や酸に影響を受けにくいのが特徴です。
そのため、お湯を加えたり、胃酸の中を通ったりしても、
多くの酵素を保ったまま身体の中に届けることができ、
さらに腸の中で食べたものを発酵させる働きもあります。
また、酵母は、発酵という作用を生み出すだけでなく、
糖の分解作用によって生活習慣病の予防・改善に役立ったり、
善玉菌の活動を支えて腸内環境を整えたり、βグルカンの作用によって免疫力を高めたりするほか、
アミノ酸・ビタミン・ミネラル成分の補給などさまざまな効果があります。
このようにみてくると、酵素は酵母が作り出す産物であり、酵素を壊さずに身体に取り入れるためには、
酵母を摂取するのが良いという考えに納得がいきますよね。
ところが一方で、酵母が作り出した酵素はその酵母にだけ役立つので、
人間が食品として酵母を摂取しても、腸内の酵素が増えることはなく、
役には立たないという説もあります。
酵素を直接摂るのがいいのか、酵母を摂るのがいいのか、専門家の中でも意見が分かれるようです。
さて、酵母と酵素の違いについて、おわかりいただけたでしょうか?
「違うということはわかったけれど、では、どちらを選べばいいの?」という声が聞こえてきそうですね。
いずれにしても、各社がそれぞれの目的に合わせて、
特徴を生かし欠点をカバーすべく工夫・開発した商品を提供していることでしょうから、
あなたの考えや好みに合うものを探してみられてはいかがでしょうか。
継続するためには、科学的な成分等だけでなく、
味や飲みやすさなどといった個人的な好みも大切なポイントです。